クリエイティブなプロジェクトにおいて、著作権や関連する法的概念を理解し、適切に素材を利用することは極めて重要です。これには著作権、著作者人格権、肖像権、商標権が含まれ、それぞれがクリエイティブな作品の使用に影響を与えます。
著作権
著作権は、作品の著作者に対して、その作品の使用、複製、配布をコントロールする権利を与えます。これにより、作品が無断で使用されることを防ぐことができます。トラブルになりやすい事例を挙げます。
- BGMにアニメソングが使われている運動会の動画
類似案件に広報活動の中でも直面しやすい問題ですが、これはNGです。そもそも無許可で楽曲を運動会のBGMに使うこと自体ダメです。SNSにアップしたら高い確率でペナルティを受けますし、会社の規模によっては危機管理事案に発展しかねないものです。可能であれば、運動会の運営担当者と広報担当者で、事前に打ち合わせをすることが望ましいです。
著作者人格権
著作者人格権は、作品の著作者が作品の改変や名誉を守る権利です。これにより、作品が著作者の意に反して変更されることを防ぎます。承諾なしに写真や映像、音楽の過度なトリミングや色調の変換などは著作者人格権を侵害しているかもしれませんので要注意です。
肖像権
肖像権は個人の肖像を無断で商業目的に使用することを制限します。これは、個人のプライバシーとイメージを保護するために重要です。法律に「肖像権」という明確な定義はない場合が多いですが、プライバシー権やパブリシティ権として肖像を保護する考え方があります。これは個人のイメージやプライバシーを不当な利用から保護するためです。一概に肖像権と言っても一般人はプライバシー権、芸能人はパブリシティ権がそれに相当するもので分けて考えないといけません。
一般人と芸能人の肖像権に関する具体的なケースを例示します
- 一般人の場合(プライバシー権): 一般人の写真を商業目的で使用する場合、その人の同意が必要です。例えば、通りを歩く人の写真を撮影し、広告に無断で使用すると、プライバシー権の侵害となり得ます。
- 芸能人の場合(パブリシティ権): 芸能人のイメージは商業的価値を持つため、その肖像を商品やサービスの宣伝に使用するには許可が必要です。例えば、有名な俳優の写真を無断で商品の広告に使用すると、パブリシティ権を侵害することになります。
- ペットの肖像権
一般的にペットには肖像権が存在しませんが、特定のペットが商業的な価値を持つ場合(例えば有名なペットや映画のキャラクター)、その使用には注意が必要です。
商標権
商標権は、特定の製品やサービスに関連するマークやロゴの使用を保護します。商標を無断で使用することは、その権利を侵害する行為となり得ます。
- 商標権と街中の看板
商標権は特定のマークやロゴに適用されます。街中の看板が特定の商標を使用している場合、その商標は保護されており、無断での使用や複製は避けるべきです。 - 商標の描かれたTシャツ
市販のTシャツであろうと、これも商標ですので、無断で使用はできません。企業の広報として収録する動画ならば細心の注意が必要です。 - 具体的にトラブルになりやすいケースのQ&Aを挙げます。
Q 制服のない企業で、商品をアピールするために社員モデルを起用した動画撮影で、当該社員がブランドロゴは入ってないがどこのブランドか一目瞭然で分かる服を着ていた場合、服を着替えるように促すのは、ある意味、ハラスメントとも受け取られかねません。この場合どう対応するべきか。
A 企業が商品をアピールする動画撮影で特定のブランドの服を着ている社員に対する対応は、慎重に行う必要があります。まず、撮影前に社員に対して服装に関するガイドラインを明確に伝えることが重要です。ブランドや商標が特定される服装の着用を避けるよう案内し、代わりに中立的な服装を推奨することが望ましいです。
もし、すでに撮影が始まっていて問題が発生した場合は、敬意を持って、なぜ服装の変更が必要かを説明することが重要です。服装の変更を促す際には、ハラスメントと受け取られないよう配慮し、必要ならば適切な代替案を提供すると良いでしょう。このような対応は、法的問題の回避と社員の理解を得るために有効です。
クリエイティブなプロジェクトにおいては、これらの権利を尊重し、法的な問題を避けるために、素材の使用には細心の注意が必要です。適切な許可を得て、法的な枠組み内でクリエイティブな作業を行うことが重要です。著作権や関連する権利には、多くの微妙な点があり、それらの理解はクリエイティブな作業において重要です。常に適切な許可を得るか、法的な助言を求めることが推奨されます。